高断熱高気密住宅をつくる理由(1)

コンクリートイメージ

学生のとき、古い鉄筋コンクリート造のマンションに住んでいる友人複数から、冬になると家がすごく寒い壁やサッシも結露で濡れているという話をよく聞いていました。
築80年の木造住宅で高校生まで過ごしていた僕は、冬は家の中は寒いのが当たり前だと思っていましたが、アルミサッシが家になかったため結露というものをあまり見たことがなく、建物の造り方の違いで室内の環境が変わることに、すこし興味は持ちましたが、その頃の僕はとにかく建物の外観や形に関心があったためあまり深く考えてはいませんでした。

ある時、有名な建築家が設計した住宅を見学する機会がありました。コンクリート打ち放し仕上げ、大きな吹き抜けにガラス張りのリビング、建築雑誌で見た豪邸に興奮しながら見学していると、一つの扉の前で奥様がニヤニヤしながら僕達を手招きしています。
納戸と説明された部屋を開けてみると、6畳程度の空間にこたつが置かれていました。ポカンとしている僕たちに奥様が、リビングがとにかく冬は寒くて夏になると暑い、大きな空調もついているのに全く効かない光熱費もばかにならない、だから普段は納戸にこたつを置いて過ごしていることを僕達に笑いながら説明してくれましたが、住まい手にとっては一流の建築家の手による素晴らしいデザインよりも寒さをしのぐことのほうが大事だったわけです。

住まいの大事な役割を突き詰めていくと、災害から身を守ること、雨風をしのぐこと、そして暑さ寒さをしのぐことです。
考えてみれば当たり前のことですが僕はその時まで、目で見える形や意匠ばかりに気を取られ、目に見えない室内の温熱環境には一切関心を持っていませんでした。
素晴らしいデザインそして空間は、住む人の心を豊かにし今まで考えてもみなかった新しい生活の提案となり住まいの進化に欠かせないものですが、そのデザインを生かすためにも目に見えないものも考えデザインしなければいけないことに、気づかされた出来事でした。

その後、じゃあどうしたら目に見えないものまでデザインすることができるのか、僕の試行錯誤が始まります。